さすらいの旅屋
最近めっきり景気がいい。
一等地のホテルの最上階は、一泊一万ドルで仕入れて三万ドルで売ってやった。
客は安い、安いと喜んでいた。
これでしばらくまた生活していける。
客は随分とまぁ、贅沢をして、一晩の夢を楽しんだ。
「また、お願いするよ」と電話をくれた。
「また」なんて、この景気がずっと続くわけないじゃないか。
客がチェックアウトをして二日が経った。
ここでもう一息、あと少し稼いでおこう。
ホテルの担当者に電話をかけた。
はなっからとにかく悪態をついてやった。
客が従業員の接客を気に入らなかったんだと言ってやった。
「俺は客の信用を失ったんだ。どうしてくれる。」
後日ホテルから口座に一千ドルの返金があった。
客に渡せ、と詫び状も届いたが、
それは破いて捨ててやった。
一千ドルは賭博に消えた。
いいさ、それでも。
一晩の夢が一千ドルなんて、安上がりなもんだろう。