ローカル放送局
ここはマンハッタンとは違って。
クリスチャン・ルブタンが誰なのかを知らなくても生きていける街。
変わることよりは変わらないことの方が多い街。
「懐かしい」というのはこちらの一方的な思いで、
この街はもうすでに私のことを覚えてはいなかった。
小さい街だといいながら、人一人いなくなっても
誰かの生活に影響を及ぼすことはない、絶妙な規模を保っている。
東口ですれ違った女子学生は、きっと十年後もそこに存在している。
同じ制服を着て、顔形だけ微妙に入れ替わって。
お昼時に牛丼を頬張るサラリーマンは、きっと十年前にもそこに存在していた。
同じスーツを着て、顔形すら違わずに。
この街でレッドソールを見つけたならば、しかとその目に焼き付けておけ。
単なるファッションアイテムであるはずのその靴は、
ここでは普通でいることへの反抗だ。
この街で愛を見つけたならば、すぐに手放してはいけない。
変わらない街に唯一ささやかな変化をもたらしてくれるのは、
人の頬が赤く染まるときに他ならない。
うるさかったはずの電車の発進音も、聞き飽きたCMソングも、
すべて愛のささやきがかき消してくれる。
ここはマンハッタンとは違って。
馴染みたいのなら、昨日と同じように今日を生きること。
今日と同じように明日を生きること。