冷凍情熱
誰よ、私の大切な情熱、冷凍庫から出した人。
長持ちするようにって、大事に大事に保存しておいたのに。
もう解凍されてきちゃって、こんなんじゃ台無し。
今から冷凍庫に戻したって、質が落ちるだけなのよ。
ここまできたら、後戻りはできないの。
不本意だけど、最善策は今食べること。
何にも特別じゃない今日という日に、こんなご馳走を食べるなんて。
眉間に皺を寄せたまま、フライパンを火にかけた。
隣から油を注ぐ腕があった。
「そんなことなら、手伝うよ。」
にこりと笑う顔があった。
そうか、犯人はこいつだな。
私の大切な情熱を、冷凍庫から出した人。
罪悪感の欠片もなしに、その調理を手伝ってしまう人。
全くおつむの弱いやつ。
隣の唇に、不機嫌なままキスをした。
しょうがないな、アピタイザーはこれで勘弁してやるけれど。
唇から唇を離すと、私の情熱はすでにこんがりと焼きあがっていた。
右のほうから物欲しげな視線を感じ取っている。
なるべく視界に入れないように、皿にとった。
テーブルまで運んで、椅子についた。
視線はその間もぴたりとくっついてくる。
そんなの無視して一口食べた。
間髪入れずに、もう一口。
でもね、やっぱり視線が気になって、味がわからない。
それより、ナイフとフォークの使い方が、合っているのかわからない。
いい加減、わかったよ。
この最高のご馳走を、最大限に楽しむには、あなたと一緒じゃないと、ダメなんだ。
ざっくりと二つに切り分けて、惜しみなく片方くれてやった。
ナイフなんて、フォークなんて、わかんないから、二人、手掴みで食べた。
平らげたあとは、汚れた口周りを指摘しあって、笑い転げた。