年上の彼女


セックスのあと、久しぶりに死にたくなった。

幸せとか不幸せとかじゃなくて、やりきったという達成感と、

これからこんなにいいことは起こらないんじゃないかという不安感の狭間で。


遅い朝食を食べに、レストランまで歩く。

天気の良い休日だから、と外側の席を確保した。

グルメな彼女は、メニューを眺めているときにここ一番の難しげな顔を披露する。

あぁ、そんなに考え込んだら綺麗な顔に皺が刻まれてしまうよ。

なるべく角が立たないように指摘した。

「そんなに難しい顔しないでよ。僕となら、なにを食べたっておいしいでしょう?」

彼女はメニューから目を離さずに言う。

「違うのよ。最近小さい文字が読みにくいだけなのよ。」

そうか、そういうことなのか。

僕は彼女のことを、まだ何もわかっていないんだと思い知らされた。


紅茶が来る。フレンチトーストが来る。

楽しいブランチになる要素は揃ったというのに、彼女は言った。

「歳の差のある恋愛は、時期が来れば痛々しくなるものよ。」

すぐさま否定したくなる気持ちを抑えて聞いた。

「その時期って、いつ来るの?」

「夜しか会わないうちはいい。

それがだんだん足りなくなって、昼間にも会い始めたら終わりが近いのよ。」

僕たちは今、真っ昼間の太陽の下にいる。喉仏に刃先をつきつけられたようだ。


彼女は続ける。

「若い髪や肌は太陽の元でますます輝くっていうのに、

こっちは見せたくないものが晒されているような感覚になるの。

どんなに地位やお金のある人も、真っ昼間に若い子を連れてりゃ見劣りするのよ。」


ここまで聞いて、そんなくだらない理由で

一つの恋愛が終わると信じている彼女に安堵した。

それならば、僕にできることはただ一つ。

これから何千何百もの真っ昼間を一緒に過ごしてあげるんだ。

そして、いつも正しい彼女もたまには間違うってことを、

身をもってわからせてあげるとしよう。

無料でホームページを作成しよう! このサイトはWebnodeで作成されました。 あなたも無料で自分で作成してみませんか? さあ、はじめよう